はじめに
こんにちは。インテリアコーディネーターのmarieです。
一日を終えて、ようやく家に帰ってきた。
ソファに座って、ほっと一息。
……のはずなのに、なぜか落ち着かない。
散らかっているわけでもない。
インテリアが嫌いなわけでもない。
それなのに、なんとなく心がざわざわする。
「家にいるのに、疲れが取れない」
そんなことはありませんか?
もしかするとそれは、あなたが疲れやすいからでも、片づけが苦手だからでもなく、
今のあなたが心地よいと感じる環境と、少しズレているだけなのかもしれません。
今日は、「癒される部屋のつくり方」を考える前に、
自分はどんなときに、ほっとするのだろう?
というところから考えてみたいと思います。
「癒される部屋」は、人によって違います
癒されるインテリアというと、どんな部屋を想像しますか?
白やベージュでまとめられた部屋。
観葉植物のある部屋。
やわらかな照明。
すっきり片づいた空間。
もちろん、そうした部屋で落ち着く人もいます。
でも、すべての人がそうとは限りません。
色に囲まれていると元気になる人。
大好きな本がたくさん並んでいると安心する人。
家族の写真や思い出のものが見えていると、幸せを感じる人。
少し暗い場所が落ち着く人もいれば、太陽の光がたっぷり入る場所で元気になる人もいます。
「癒される部屋」に、一つの正解があるわけではありません。
大切なのは、
「私は、どんな環境にいると力が抜けるんだろう?」
と、自分の心地よさを知ることです。
心が休まらないのは、小さな「気になる」が残っているからかもしれません
たとえば、ソファに座ったとします。
目の前には、まだ提出していない学校の書類。
「あ、出さなくちゃ」
その横には、読みかけの資料。
「これも読まなきゃ」
少し向こうには、片づけようと思っていたもの。
「そうだった。これもやらなくちゃ」
何かを始めたわけではないのに、部屋を見ているだけで、次々と「やらなくちゃ」が浮かんでくる。
そんなことはありませんか?
私たちは、空間からさまざまな情報を受け取っています。
目に入るものが、自分にとって「まだ終わっていないこと」を思い出させるものばかりなら、
身体はソファに座っていても、気持ちはまだ休めていないのかもしれません。
だからといって、全部しまえばいいということでもありません。
大好きなアート。
お気に入りの本。
家族の写真。
旅先で見つけた小物。
同じように視界に入るものでも、
「やらなくちゃ」を思い出すものと、
「好き」「嬉しい」「安心する」を感じるものでは、心への働きかけが違います。
一度、部屋をそんな視点で眺めてみるのも面白いと思います。
心と身体は、部屋からたくさんの刺激を受け取っています
「特に嫌なところはないのに、なぜか落ち着かない」
そんなときは、目に見えるインテリアだけでなく、身体が受け取っている刺激にも目を向けてみてください。
たとえば、
照明が少し眩しい。
テレビや家電の音がずっと聞こえている。
暑い、寒い、乾燥している。
ソファやラグの肌触りがなんとなく落ち着かない。
人が後ろを通るたびに気になる。
必要なものを取るために、何度も立ち上がる。
目に入る書類を見るたびに、「やらなくちゃ」と思う。
一つひとつは、とても小さなことです。
だから、「これくらい普通」と気づかずに過ごしていることもあります。
でも、くつろぐための場所なら、
光・音・温度・湿度・触り心地・視線・動線・目から入る情報
を、一度ゆっくり観察してみる。
「一般的には快適か」ではなく、
「今の私の身体は、ここで力を抜けている?」
と考えてみると、今まで気づかなかった小さな違和感が見つかることがあります。
心地よさが分かったら、空間に置き換えてみる
たとえば、
「一人で静かにしていると、ほっとする」
と気づいたなら、大きな模様替えをしなくても、自分だけの小さな場所をつくれるかもしれません。
「自然を見るとほっとする」なら、窓から見える緑を生かしたり、小さな植物を置いたり。
「好きなものを見ると嬉しくなる」なら、お気に入りのアートや思い出のものを、一番目に入りやすい場所に飾ってみる。
「夜は光が眩しいと疲れる」と気づいたなら、照明を一つ消して、スタンドライトだけで過ごしてみる。
反対に、
「書類を見るたびに、やらなくちゃと思って落ち着かない」
なら、ソファから見えない場所に一時置き場をつくる方法もあります。
大切なのは、
「一般的に癒される部屋」に近づけることではなく、自分が感じたい気持ちに環境を近づけること。
自分の心地よさが分かると、インテリアを整える理由も少し変わってきます。
家族の気配が「癒し」になることもある
わが家の子どもたちを見ていると、「癒される」というのは、静かな部屋で一人になることだけではないのだと感じます。
ぬいぐるみをそばに置いたり、肌触りのいいブランケットに包まれたり。
家族の顔が見える場所で、それぞれ違うことをしていることもあります。
一緒にテレビを見て笑ったり、同じ料理を食べたり。
「誰かの気配があること」が安心につながる人もいるのだと思います。
反対に、一人になることでようやく力を抜ける人もいます。
どちらがいいということではありません。
大切なのは、
「私は、一人のときに休まる?」
「それとも、大切な人の気配があるときに休まる?」
と、自分の心地よさを知ることです。
アートも、心を整える環境のひとつ
壁に飾るアートも、空間の印象を整えるためだけのものではありません。
見ると、なぜかほっとする。
気持ちが明るくなる。
懐かしい記憶を思い出す。
想像が広がる。
「この絵、やっぱり好きだな」と嬉しくなる。
そんなふうに、一枚のアートが自分の感情を動かしてくれることがあります。
だから、「癒される部屋には、どんなアートがいいですか?」にも、一つの正解があるわけではありません。
穏やかな色の作品に安心する人もいれば、鮮やかな色から元気をもらう人もいるでしょう。
大切なのは、
「この作品を見ると、私はどんな気持ちになる?」
ということ。
好きなアートがあるなら、休みたい場所からよく見える位置に飾ってみるのも、ひとつの方法です。
「癒し」を一つ、実験してみませんか?
今夜、いつもの場所で一つだけ試してみてください。
天井照明を消して、スタンドの光だけにしてみる。
好きなブランケットに包まれてみる。
「やらなくちゃ」を思い出す書類を、視界から外してみる。
椅子の向きを変えてみる。
好きなアートを、くつろぐ場所から見える位置に移してみる。
家族のそばに座ってみる。
反対に、一人になれる場所へ移動してみる。
全部やる必要はありません。
一つだけ変えて、10分ほど過ごしてみる。
そして、
「さっきより、少し力が抜けた?」
と自分に聞いてみてください。
「あまり変わらない」でも大丈夫。
合わなければ元に戻して、別のことを試してみればいいのです。
一般的に「癒される」といわれている環境よりも、自分が本当に休まるかどうかの方が大切です。
「なんとなく落ち着かない」は、自分を知るヒント
「なぜか、この部屋では落ち着かない」
そんな小さな違和感を、無理に我慢しなくてもいいのだと思います。
光なのか。
音なのか。
温度や湿度なのか。
肌に触れるものなのか。
視界に入る「やらなくちゃ」なのか。
人との距離なのか。
それとも、好きなものが目に入らないことなのか。
一つ気づいて、一つ変えて、また自分の感覚を確かめてみる。
そして、
「あ、こっちの方が好き」
「さっきより少し落ち着く」
が見つかったら、それは小さいけれど、とても大切な発見です。
癒される部屋は、誰かの正解を再現することではなく、自分が休まる環境を少しずつ見つけていくことから始まるのだと思います。

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