夜中に目が覚める、眠りが浅い……
夜中に何度も目が覚める。
眠りが浅く、朝になっても疲れが取れない。
そんな悩みはありませんか?
年齢を重ねるにつれて、以前のようにぐっすり眠れなくなったと感じる方もいるかもしれません。
睡眠を改善しようと思ったとき、まず思い浮かぶのは枕やマットレスなどの寝具ではないでしょうか。
けれど、眠りに関係しているのは寝具だけではありません。
照明や太陽光、寝室の温度や湿度、周囲の音、そして目が覚めたときの過ごし方。
住まいや暮らしの中にも、眠りを整えるヒントがあります。
今回は、睡眠に関する研究を参考にしながら、インテリアと空間デザイン心理学®︎の視点で、心地よい眠りのためにできる4つの工夫をご紹介します。
はじめに|私自身も、眠りに悩んでいました
以前の私は、音にとても敏感でした。
隣で眠る人の寝返りや、早朝の新聞配達のバイクの音でも目が覚めてしまい、その後なかなか眠れないことがありました。
考え事が多いときには、一度目が覚めると頭がさえてしまうことも。
今では、睡眠を記録したり、朝に散歩をしたり、体の緊張を緩めたりする習慣を取り入れ、以前より眠りがよくなったと感じています。
そんな経験から、眠りを整えるためには、自分の睡眠を知ることが大切だと感じています。
あなたは、どんなときに目が覚めますか?
暑さや寒さ、音、光、それとも考え事でしょうか。
眠りを妨げているものに気づくことが、改善の第一歩になるかもしれません。
1|光を整える ― 照明と太陽光で眠りのリズムをつくる
光は、私たちの体内時計に大きな影響を与えています。
2011年の研究では、就寝前の室内照明が、睡眠と関係するホルモン「メラトニン」の分泌を抑制したり、分泌開始を遅らせたりすることが報告されています。
また、2022年に発表された国際的な専門家による推奨では、日中は十分な光を浴び、夜は光を抑え、睡眠中はできるだけ暗くすることが勧められています。
つまり、寝室だけでなく、眠る前に過ごすリビングの照明も大切なのです。
夜は、光を少しずつ落としてみる
夕食を終え、入浴し、眠りにつくまでの時間。
リビングの照明を昼間と同じ明るさのままにしていませんか?

夜は必要な明るさを確保しながら、照明を少しずつ落としてみましょう。
調光・調色機能のある照明なら、時間帯に合わせて明るさや色温度を調整できます。
スタンドライトや間接照明を使い、必要な場所だけを照らす方法もおすすめです。
ただし、暖色の光や間接照明なら必ず睡眠に良いというわけではありません。
光の色だけでなく、明るさや光源の位置、目に入る光の量も関係します。
朝は、自然光を取り入れる

一方、朝の光は体内時計を整える手がかりになります。
起きたらカーテンを開け、自然光を取り入れてみましょう。
朝にカーテンを開けることが難しい方には、タイマー付きの電動カーテンや、徐々に明るくなる照明も選択肢になります。
例えば、SwitchBotなどのスマートカーテンを使えば、設定した時間にカーテンを開けることもできます。
眠る前の1〜2時間、リビングの照明を少し暗くしてみましょう。
翌朝は、カーテンを開けて自然光を取り入れてみませんか。
2|寝具を整える ― 素材・温度・寝心地を見直す
眠りを考えるうえで、寝具選びも大切です。
ただし、柔らかさや硬さだけでなく、素材や温度、湿度にも目を向けてみましょう。
布団の中にも、快適な温度と湿度がある
寝室の温度が快適でも、布団の中に熱や湿気がこもっていることがあります。
体と寝具の間にできる小さな空間の温度や湿度を、「寝床内気候(しんしょうないきこう)」と呼びます。
暑さや寒さが睡眠に影響することは、研究でも示されています。
2024年に発表された、寝具や寝間着の繊維素材と睡眠に関するシステマティックレビューでは、素材の違いが睡眠に影響する可能性が示されました。
一方で、どの素材が最も優れているかについては、まだ明確な結論が出ていません。
例えば、羊毛(ウール)は水蒸気を吸収・放出する性質があり、保温性にも優れています。
リネンは吸湿性があり、比較的乾きやすい素材です。
綿にも吸湿性があり、化学繊維にも吸汗速乾などの機能を備えた製品があります。
キャメル(ラクダの毛)は保温性に優れ、吸湿性を持つ天然繊維です。寝具では、その特性を生かした敷きパッドなどにも使われています。
汗をかきやすい方、寒がりの方、肌触りに敏感な方。
素材の特性を知り、自分に合ったものを選ぶことが大切なのだと思います。

リカバリーウェアだけではない、寝具から考える選択肢
最近は、血行促進や疲労回復をサポートする「リカバリーウェア」が注目されています。
一方で、寝るときの衣類にはこだわりがあったり、肌触りが気になったりする方もいるでしょう。
そんな方に知っていただきたいのが、マットレスから考えるという選択肢です。
例えば、シモンズの「e-ionクリスタル」を使用したマットレス。
メーカーによると、天然鉱石を用いた特殊なシートから遠赤外線などが放射・発生し、血行促進をサポートする仕組みとのことです。
一般医療機器として届け出られた製品もあります。
ただし、医療機器としての届出があることと、睡眠の質の改善が科学的に確認されていることは別です。
リカバリーウェアと同等の効果があるという意味でもありません。
それでも、衣類ではなく寝具から快適さを考えるという発想は、一つの選択肢になると思います。
大切なのは、機能だけでなく、マットレス本来の寝心地や体へのフィット感も確かめることです。
枕難民の方へ。自分に合う寝心地とは?
以前、お客様からこんなお話を伺いました。
「いろいろな枕を試したけれど、結局、枕を使わないのが一番よかった」
私も試してみたところ、意外にも自分に合っていました。
もちろん、枕を使わないことが誰にとってもよいわけではありません。
首の状態や寝姿勢、マットレスの硬さによって、必要な支え方は変わります。
枕の素材や形状と首の痛み、睡眠の関係を調べた研究でも、すべての人に共通する最適な枕が見つかっているわけではありません。
評判のよい枕も、高価な枕も、自分に合うとは限らない。
だからこそ、専門家に相談したり、実際に寝て試したりすることが大切です。
朝起きたとき、背中が蒸れていないか、首や肩に違和感がないか、寒さを感じていないかを観察してみましょう。
寝具を買い替える前に、自分の体が何を求めているのかを知ることから始めてみませんか。
3|音を整える ― 家具の配置と窓から、静かな寝室をつくる
夜中に目が覚める原因の一つに、周囲の音があります。
道路を走る車の音、家族の生活音、隣で眠る人の寝返り。
同じ音でも、気にならない人もいれば、目が覚めてしまう人もいます。
夜間の騒音と睡眠障害の関連は、複数の研究で報告されています。
家具の配置を見直してみる
例えば、道路に面した窓のすぐ近くにベッドを置いている場合、配置を変えることで、音の感じ方が変わることもあります。
寝室のレイアウトを見直すときは、窓やドアの位置、隣接する部屋の使い方も考えてみましょう。
窓の遮音性を高める
外からの音が気になる場合は、窓の遮音性を高める方法もあります。
例えば、LIXILの「インプラス」のような内窓を設置する方法です。
既存の窓の内側にもう一つ窓を設けることで、遮音性や断熱性の向上が期待できます。
ただし、効果は窓の仕様や施工条件、音の種類によって異なります。
大がかりな工事をする前に、まずは家具の配置や音の侵入経路を確認してみましょう。
眠るとき、どこから音が聞こえてくるか、少し意識してみましょう。
窓からなのか、廊下からなのか、隣の部屋からなのか。
音の入り方を知ることが、対策を考える第一歩になります。
4|目が覚めたときの工夫 ― 眠ろうと頑張りすぎない
どんなに環境を整えても、夜中に目が覚めることはあります。
そんなとき、以前の私は「早く眠らなければ」と焦ってしまうことがありました。
けれど、眠ろうと頑張るほど、かえって頭がさえてしまうこともあります。
眠れない自分を責めない
不眠に対する認知行動療法では、眠れないまま長時間寝床で過ごすことを避ける方法が用いられています。
なかなか眠れず焦りが強くなるときは、いったん寝床を離れ、薄暗く安全な場所で静かに過ごし、眠気が戻ってから寝床に戻る方法もあります。
「今すぐ眠らなければ」と考えるよりも、まずは気持ちを落ち着かせることを大切にしたいですね。
体の緊張を緩めてみる
私が取り入れているのは、体に軽く力を入れてから、ふっと力を抜く方法です。
これは「筋弛緩法」と呼ばれるリラクゼーションの考え方にも通じています。
ほかにも、耳をやさしくマッサージしたり、瞑想の音声を聞いたりしています。
耳のマッサージそのものに確立した睡眠改善効果があるわけではありませんが、私にとっては気持ちを落ち着かせる習慣の一つです。
瞑想や呼吸法も、自分に合う方法を無理なく取り入れることが大切です。
夜中のトイレは、まぶしくない明かりで
夜中にトイレへ行くとき、廊下やトイレの明るい照明をつけていませんか?

強い光は目を覚ましやすくするため、夜間の移動には、必要な場所をやさしく照らす足元灯などが役立ちます。
人感センサー付きの照明を使えば、スイッチを探す必要もありません。
ただし、転倒を防ぐため、床や段差が安全に見える明るさは確保しましょう。
また、夜間頻尿そのものは照明では改善できません。頻繁に続く場合は、医療機関への相談も大切です。
夜中に目が覚めたら、まずは「眠らなければ」と焦らず、ゆっくり呼吸してみましょう。
そして、体の力を少し緩めてみませんか。
眠れない自分を責める必要はありません。
おわりに|心地よい眠りに、たった一つの正解はない
以前の私は、眠りに悩んでいました。
今では、睡眠を記録する『Pokémon Sleep』や、朝の散歩を楽しむ『Pikmin Bloom』を続けながら、自分の眠りを振り返るようになりました。
もちろん、アプリそのものが睡眠を改善したと断定できるわけではありません。
けれど、自分の状態に関心を持ち、小さな習慣を続けるきっかけになったことは、私にとって大きな変化でした。
睡眠を改善しようとすると、新しい枕やマットレス、便利な家電を探したくなることがあります。
もちろん、それらが役立つこともあるでしょう。
けれど、まずは今の住まいの中に、できることがないか探してみませんか。
夜の照明を少し落とす。
寝具の素材や温度を見直す。
気になる音への対策を考える。
夜中に目が覚めても、眠ろうと頑張りすぎない。
心地よい眠りに、たった一つの正解はありません。
自分の体と心の声を聞きながら、自分に合う環境を一つずつ見つけていきましょう。
あなたが心地よく眠るために、今の住まいで変えてみたいことは何でしょうか。
今夜は一つだけ、試してみてください。
そして明日の朝、自分の体がどう感じているか、少しだけ耳を傾けてみましょう。
心地よい眠りは、特別なものを買うことからではなく、自分を知ることから始まるのかもしれません。
暮らしを整え、美しく生きる。
参考文献・資料
- Gooley, J. J. et al. (2011). Exposure to Room Light before Bedtime Suppresses Melatonin Onset and Shortens Melatonin Duration in Humans. Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism.
- Brown, T. M. et al. (2022). Recommendations for daytime, evening, and nighttime indoor light exposure to best support physiology, sleep, and wakefulness in healthy adults. PLOS Biology.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8929548/ - Liら(2024)寝間着・寝具の繊維素材と睡眠の質に関するシステマティックレビュー。Journal of Sleep Research.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11596996/ - 厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド2023』
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。睡眠の悩みが長く続く場合や、日中の強い眠気、頻繁な夜間頻尿などがある場合は、医療機関へご相談ください。
