工事なしでできる、心地よい照明の工夫

光の高さ・色・明るさで、暮らしと睡眠を整える

こんにちは、インテリアコーディネーターのmarieです。

夜、リビングの天井照明をすべてつけたまま過ごしていませんか?

部屋は明るいのに、なぜか落ち着かない。そんな経験はないでしょうか。

照明は、ただ部屋を明るくするためのものではありません。

光の位置や色、明るさを少し変えるだけで、同じ部屋でも過ごし方や感じ方が変わることがあります。

今回は、新築やリフォームをしなくても、今日から取り入れられる照明の工夫をご紹介します。

部屋の隅々まで明るくしなくても、心地よい

以前、海外で暮らす友人の部屋を訪れたときのことです。

その部屋には、天井から部屋全体を照らす照明がありませんでした。

明かりは、いくつかのスタンドライト。

日本の住宅で見慣れた明るさとは違い、部屋にはほどよい陰影がありました。

不思議だったのは、多少ものが出ていても、それほど散らかっているようには感じなかったこと。

光が届く場所に自然と視線が向かい、そこには整った、落ち着いた雰囲気がありました。

旅行中は、できるだけ長く起きて楽しい時間を過ごしたいと思う私ですが、その部屋では夜が深まるにつれて、ゆっくり休みたくなったことを覚えています。

もちろん、旅の疲れもあったのでしょう。

それでも今振り返ると、光のつくり方が、そこで過ごす気分に関係していたのかもしれないと思います。

日本のホテルでも、天井から均一に照らすのではなく、スタンドライトや壁際の光を組み合わせた、落ち着いた照明を見かけます。

住宅にも取り入れられる考え方です。

1.スタンドライトで、光の高さを変えてみる

天井照明は、部屋全体の明るさを確保するのに便利です。

でも、いつも部屋全体を同じ明るさにする必要はありません。

例えば、ソファの横にフロアスタンドを置く。
サイドテーブルに小さなテーブルスタンドを置く。
特に夜は、天井照明を少し暗くして、低い位置の光を取り入れてみてください。

光が当たる場所と、少し暗さが残る場所。

そのメリハリが、くつろぎの雰囲気をつくってくれます。

一方で、読書や勉強、細かな作業をするときには、手元をしっかり照らすことが大切です。

部屋全体の光と、必要な場所を照らす光を分けて考える。

これを照明計画では「タスク&アンビエント照明」という考え方で説明することがあります。

難しく考えなくても大丈夫。

くつろぐための光と、作業するための光は、同じでなくてもよいのです。

2.光の色を、過ごし方に合わせて選ぶ

照明には、オレンジ色に近い暖かな光から、白っぽい光まで、さまざまな色があります。

この光の色を表す指標が「色温度」です。

一般的な住宅用照明では、次のような呼び方が使われます。

  • 電球色:暖かみのあるオレンジ寄りの光。くつろぐ時間に。
  • 温白色:電球色と昼白色の中間。食事や日常生活に。
  • 昼白色:自然な白さを感じる光。勉強や細かな作業に。

では、光の色によって、集中力や創造性にも違いが生まれるのでしょうか。

暖かな光は、アイデアを生み出す時間に?

2015年に発表されたドイツの研究では、50人を対象に、同じ明るさのもとで3種類の色温度を比較しました。その結果、6,000Kの白っぽい光では集中力テストの成績が高く、3,000Kの暖かな光ではアイデアを生み出す創造性テストの成績が高いことが報告されています。

興味深い結果ですよね。

例えば、読書感想文を書くとき。

本を読み、文章を確認するときには、文字が見やすい明るさを確保する。

一方で、どんなことを感じたのか、何を書こうかとアイデアを考える時間には、暖かな光を試してみる。

絵を描いたり、工作のアイデアを考えたりする時間にも、光の色を変えてみると、新しい発見があるかもしれません。

ただし、この研究だけで「電球色なら必ず創造力が高まる」とは言えません。

作業の内容や好み、時間帯によっても感じ方は異なります。

大切なのは、光を選べること。

私自身も、電球色・温白色・昼白色に切り替えられるタスクライトを使っています。

窓から入る光や、そのときの作業に合わせて調整できるので便利です。

室内全体の光と手元の光の色を近づけると、私には落ち着いて感じられることもあります。

3.朝と夜では、必要な光が違う

照明について考えるとき、もう一つ大切にしたいのが「睡眠」との関係です。

私たちの体には、約24時間の周期で睡眠や覚醒のタイミングを調整する、体内時計の仕組みがあります。

そして、光はその体内時計に影響する重要な環境要因の一つです。

2022年、国際的な研究者グループは、学術誌『PLOS Biology』で、健康な成人の睡眠や覚醒を支える光環境について専門家提言を発表しました。

そこで示されている基本的な考え方は、次のようなものです。

朝から日中は、十分な光を取り入れる。
就寝前の約3時間は、光を控えめにする。
眠っている間は、できるだけ暗い環境にする。

日中は、まず自然光を上手に取り入れることが勧められています。

一方、夜は暖かい色の照明を選ぶだけでなく、明るさそのものを抑えることも大切です。

電球色だからといって、どれほど明るくても睡眠に影響しない、というわけではありません。

夜になったら天井照明を少し暗くし、必要な場所だけをスタンドライトで照らす。

そんな小さな工夫が、眠りに向かう環境づくりにつながります。

※この提言は主に健康な成人を対象としたものです。子どもや高齢者には、年齢に応じた配慮が必要です。

思春期の子どもが朝起きられないのは、なぜ?

子育てをしていると、子どもによって朝の目覚め方がずいぶん違うと感じます。

実は、思春期には男女ともに、睡眠のリズムが夜型へずれやすくなる傾向があることが研究で知られています。
その変化が現れる時期には個人差があり、女子のほうが比較的早い傾向も報告されています。
学校のない休日や長期休暇に、就寝時刻や起床時刻が遅くなりやすい背景には、こうした身体の変化も関係しているかもしれません。

もちろん、生活習慣や睡眠不足など、ほかの要因もあります。

だからこそ、「早く寝なさい」と声をかけるだけでなく、朝はカーテンを開けて自然光を取り入れ、夜は照明を落として過ごす。

家族の睡眠を、環境から支えるという視点も大切にしたいですね。

4.照明で気をつけたいこと

心地よい照明を考えるときには、暗くすればよいというわけでもありません。

例えば、読書や勉強の手元が暗いと、文字が見づらくなります。

スタンドライトの光源が直接目に入ったり、パソコンの画面に映り込んだりすると、まぶしさを感じることもあります。

また、絵を描く、布や壁紙の色を選ぶといった場面では、光の色によって色の見え方が変わることにも注意が必要です。

私自身、インテリアの色を確認するときは、夕方のオレンジ色に傾いた自然光だけで判断しないようにしています。

色を正確に確認したいときには、適切な光源のもとで見比べることが大切です。

照明は、雰囲気のよさと同時に、見やすさや安全性も考えて選びたいものです。

5.今夜からできる、3つの照明の工夫

新しい照明器具を買う前に、まずは今ある照明で試してみましょう。

① 天井照明を少し暗くしてみる
調光できる照明なら、夜は明るさを落としてみる。部屋の雰囲気がどう変わるか、感じてみてください。
② スタンドライトの位置を変えてみる
ソファの横、読書をする椅子のそば、部屋の隅など、置く場所によって光の広がり方が変わります。転倒やコードの引っ掛かりには注意しましょう。
③ 朝と夜で、光の使い方を変えてみる
朝はカーテンを開けて自然光を取り入れる。日中は活動に必要な明るさを確保し、夜は暖かく控えめな光に切り替える。
一日の時間の流れに合わせて、照明も変えてみましょう。

おわりに|光を整えることは、暮らしの時間を整えること

同じ部屋でも、朝の光と夜の光では、感じ方が違います。

仕事や勉強に向かう時間。
家族と食卓を囲む時間。
一人で静かにくつろぐ時間。
そして、眠りに向かう時間。

それぞれに合った光があってもよいのではないでしょうか。

心地よい照明は、必ずしも大掛かりな工事や高価な器具から生まれるものではありません。

まずは今夜、いつもの照明を一つ消したり、スタンドライトの位置を変えたりしてみてください。

光を少し変えることが、いつもの暮らしを見つめ直すきっかけになるかもしれません。


参考文献

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